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2012年03月28日
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現場が組織を動かす!
現場力としてのプロジェクトマネジメント


プロジェクトマネジメントオフィス 好川哲人


第9回 第8の現場力〜曖昧力(2008.03.11)

◆仕組みを変えるか、人(行動)を変えるか

第8の現場力は曖昧力だ。

何か問題が発生したときに、マネジャーは仕組みや組織を変えたがる人と、人(行動)を変えたがる人にわかれる。米国は圧倒的に前者のマネジャーが多く、それゆえに、組織学習だとか、トヨタ方式だとか、人を変えるスキームが形式知として確立されている。プロジェクトマネジメントも米国流のご多分に洩れず、すぐに組織を変えてなんとかしようとするプロジェクトマネジャーが多い。

ところが、元来、日本の多くのマネジャーは、人を変えたがる人が多い。暗黙知でやっている。つまり、問題が起こったときに仕組みはそのままにして、人を成長させることによって行動を変え、問題を解決するとともに、その人により仕組みが変わるところまで持ち込むのだ。

仕組みを変える場合、ものごとを明確にし、それによって問題の所在を明確にし、問題を解決していく。このやり方は一見、この上なく合理的なやり方に見えるが、状況の変化に弱い。これに対して、人間を中心に考えるやり方は人間のもつ柔軟性を活用するので、変化に強い。


◆プロジェクトマネジメントの言い分

この問題に対するプロジェクトマネジメントの言い分はこうだ。

人にはできる人もいるし、できない人もいる。連日徹夜をして働ける人もいれば、プロジェクトが佳境に差し掛かっていても子供の世話のために定時には帰らなくてはならない人もいる。すべての人が同じ様に働けるようにするには、そのようなマネジメントが必要である。成果と責任を明確にし、責任を明確に分かちあい、計画的に統合していくマネジメントこそ、そのような仕事の方法を可能にする。

これに対して、日本のやり方は、こうだ。

まずは、仲良くなろう。仕事の遅い人、早い人がいるが、早い人は遅い人をカバーすればいい。違う仕事では立場が逆転するかもしれない。家庭の事情で遅くまで仕事ができない人の分は誰かがやればよい。次のプロジェクトでは、逆の立場になるかもしれない。持ちつ持たれつだ。

本当に生産性を上げるために必要なのは、とことん、仕事を細分化し、分け、責任を明確にし、個人の生産性を上げた人には報償を与えることではない。チームとして生産性を上げる仕組みを考えることだ。そのためには、曖昧さを残したままで、自己決定をさせることである。


◆ボルボのやり方

車の世界で、フォードの考えたライン管理に対して、ボルボがワークショップという考えを作った。ライン管理は、同じ仕事を繰り返し行うことにより、ミスをなくし品質向上を実現するとともに、習熟による生産性を上げようという方法である。これに対して、ワークショップは何工程かをまとめ、その工程担当者がいるブースに取り込み、そこで担当者がお互いに協力をしながら作業を進めていく方法である。ワークショップでは、作業者のワーキングモチベーションを上げることにより品質を上げると同時に生産性を高めようという考え方だ。

どちらが生産性が高くなるかは別の理由で結論が出ていない。車のモジュール化が進んでいくことにより、一人の作業者のカバーする工程が増えて、ちょうど、中間的な仕事になってしまったからだ。

◆プロジェクトマネジメントの懐

さて、実は、プロジェクトマネジメントにはWBSという興味深い概念がある。何を言っているのだと思われるかもしれないが、WBSはマネジメントとしてのコントロールとチームとしてのコントロールを両立させるために、ワークパッケージという概念を持っている。ワークパッケージの中の作業の実施と管理はワークパッケージ責任者に任せる。

WBSのワークパッケージは、ボルボのワークショップと同じ役割をしている。実は、曖昧な仕事の進め方ができるのだ。

結局のところ、曖昧さを残すことによって、メンバーのパフォーマンスを上げるということがパフォーマンスマネジメントの基本である。ここで、あいまいさを残すことと、丸投げすることは全く違うことをよく理解しておく必要がある。曖昧さを残すというのは、「意図されたあいまいさ」でなくてはならない。意図された曖昧さはチームのパフォーマンスの向上に寄与しなくてはならない。この意図されたあいまいさをどのくらい作れるかが曖昧力である。


◆意図された曖昧さとしての段階的詳細化

ずっと人の話を中心に進めてきたが、もう一つの曖昧力の例をあげよう。段階的詳細化である。

戦略ノートの148回で、延期と投機の話をした。

第148回 プロジェクトにおける延期と投機

プロジェクトの意思決定の場面で延期戦略をとりたいケースは少なくない。仮説による投機戦略はそれはそれで重要なのだが、その仮説設定が未来に対して影響を与えるケースがあるからだ。たとえば、ある技術が実現できることを前提にして、商品の仕様を決めたとする。すると、この仮説が仕様に影響を与えることになる。その技術が確立できればよいが、できずに代替技術で対応したとすれば付加価値が高いものにならない。

仮にその技術がないことを前提にすれば、もう少し、違った付加価値を検討できる可能性がある。その意味で、仕様の問題はできるだけ延期することが望ましい。プロジェクトマネジメント的にいえば、段階的詳細化を行い、技術的判断を確定させたところで検討の方法を決めるといった対応になる。

ここでも、曖昧さをうまく活用してプロジェクトを進めていくことが望まれる。このように曖昧さをうまく作り、それを活用して成果物の付加価値を高めていくことは、現場力のあるマネジャーに特有の行動だといえよう。


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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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