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プロジェクトにおいて、責任を明確にしようとした場合、提案、決定、承認、という行動の意味をきちんと整理する必要がある

第14回 分かっているようで分かっていない提案・決定・承認の関係(2010.09.07)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


前回の続き。

◆阿久根市のブログ市長

8月の下旬に鹿児島県阿久根市で、市議会を開かず専決処分を繰り返してきた竹原信一市長が、「議会が不承認でも専決は有効である」という話を聞き、ついに議会を開き、話題になった。この話、結構、日本社会の合意形成の本質的な話かもしれない。

新聞情報に基づき、もう少し、正確に説明しておくと、法律に則り正しく専決された事項は、議会の承認に優先するということらしい。法律に則る専決であるための要件はいくつかあるが、その一つが「緊急性」の有無とのこと。ただし、これは災害時の迅速な意思決定とか、議長が議会を開催せず市長提案を審議しない場合を想定しているルールで、市長が議会の開催を拒否して専決することは想定しておらず、合法かどうか微妙だというのが総務省の見解だという。

ここで興味深いのは、専決(決定)と承認の関係である。阿久根市の事例で分かるように、決定されたものは、承認されなくても有効である。おそらく概念的にはこれが一般的である。もちろん、決定は公式権限を用いて行われる。

一般的な議会の運営は市長提案に対して、議会が審議するというものだ。この場合、提案であるので否決されれば実施できない。この場合は否決であり、議会が決めるのだ。

興味深いのは、専決であれば不承認になっても、有効であり、実行できるという点だ。つまり、決めることは承認することより強いのだ。

そして、この阿久根市の事例ではあまりはっきりしていないが、専決事項のアカウンタビリティ(説明責任、成果責任)もレスポンシビリティ(実行責任)も決定者の市長(行政組織)にある。これは議会の承認を受けても受けなくても変わらない。議会は市長の専決事項の実施をモニタリングする立場にある。議会が決定をする場合には、アカウンタビリティは議会にある。そして、決定事項のレスポンシビリティは市長を長とする行政組織にある。

◆提案か、承認か

プロジェクトにおいても同様の構図がある。プロジェクト憲章によってプロジェクトマネジャーが指名され、プロジェクトマネジャーには規定の決定権限が与えられる(多くの場合は、プロジェクトマネジメント標準などで決まっているので、その履行が認められる)。プロジェクトマネジャーは市長の立場になり、プロジェクトを進めるために必要なことを決めて行く。上位管理者(プロジェクトスポンサー)や上位組織は議会と同じ立場になる。必要に応じて、プロジェクトマネジャーが決めたことを承認する。

ここまでは問題ないと思う。

月例会のような場で、話し合いをし、プロジェクトマネジャーの決定に対する承認が行われれば問題ないが、それでは間に合わない場合はどうするか。いわば緊急性を要するわけだ。その場合、市長と同じようにプロジェクトマネジャーは決定をし、承認を得ることなく、実行することができるのか?それとも、持ち回りをして承認を得なくてはならないのか。

ここで問題になってくるのが、プロジェクトマネジャーが上位組織に伝えることは提案(稟議)なのか、決定なのかだ。もし、提案であれば上位組織が決定することになる。決定であれば、上位組織の承認を得ることになる。

決定権限があっても「稟議」であればこれは提案であり、承認をされない限り、実行できない。しかし、決定権限があれば決定ができ、承認を取らずに実行することはできない。

◆決定権を与えて、提案を求める矛盾

多くの場合は、決定権限を与えていると良いながら、稟議になっている。つまり、決定したいことを提案しろといっているわけだ。これはこれで構わないと思うが、この場合のはアカウンタビリティは上位組織にある。プロジェクト側にあるのはレスポンシビリティだけだ。つまり、決定事項を実行し、問題が起こればそれは上位組織の問題になる。

プロジェクトマネジャーが決定権限を持ち、稟議するルールになっていないものは、プロジェクトマネジャーが決定し、承認を得ることになる。この場合、承認より決定の方が強く、承認されなくても実行しても問題はない。その代わり、アカウンタビリティもレスポンシビリティもプロジェクトマネジャーにある。

◆行動と責任の関係を整理する

問題は、2つある。一つは提案のケースで、アカウンタビリティをプロジェクトマネジャーに押しつけているケース。もうひとつは、プロジェクトマネジャーが決定し、承認を得る場合に、プロジェクトマネジャーが勝手にアカウンタビリティは自分にはないと思い込んでいるケースだ。

プロジェクトにおいて、責任を明確にしようとした場合、

提案、決定、承認

という行動の意味をきちんと整理する必要がある。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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